ワンピース航海記録

こちらはワンピースを中心に物語の感想などを扱っているブログです。

日本に目を向ける「小泉八雲集」

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 ここ二日くらいの報道番組やネットニュースを見ると、ハロウィン関係のものが目につきます。

 私は都内に住んでいないので現場がどれほどなのかはわかりませんが、ニュースを見る限りかなり凄いものですよね。先日、某報道番組で見た時は当日でもないのに酔った勢いで軽トラックが横倒しにされるとか怖すぎる・・・。

 日本では傍から見れば百鬼夜行のコスプレパーティーのようになったハロウィン。このような行為に苦言を呈する人たちもかなり多くいる印象です。私なりにも思うことはたくさんあるのですが、すでにいろいろ主張している人が多いので、そこらへん強い追及はしません。

 しかし日本人が外国のことをどのように認識しているかは興味深いところ。それは逆もしかりです。今回は小泉八雲を絡めて、書いていきたいと思います。

多くのハロウィン

 ハロウィンの起源は、ケルト人の祭りだと考えられています。秋の収穫を祝うだけでなく、悪霊を追い払う意味合いもある祭りなようです。

 日本ではこういった類の印象は皆無と言っていいでしょう。どちらかといえば、アメリカの恒例行事となった現在のハロウィンを参考にした雰囲気ですね。あっちは子ども達が仮装してトリックオアトリートして、お菓子を貰うので、やっていることは全然違いますが。

 

 この祭り自体、様々な印象を抱かせるのは事実。かつての悪霊払いの意味合い、子ども達がお菓子を得られる楽しい祭り、コスプレして騒ぎまくって意見が飛び交う行事・・・これだけでも多いですが、キリスト教絡みだとさらに様々な意見が飛び交います。

 国や文化の違いでここまで変化する祭りは珍しいでしょう。

悪霊と日本の怪談

 とはいえ仮装を見る限り、起源と考えられている悪霊払いの名残は僅かながらに残っている印象もあります。日本でもただのコスプレの人もいますが、視覚的にそういった方向を表している人も少なからずいるように思います。(本人はどう思っているのかはわかりませんが)

 では日本人は外国の悪霊関係に対して理解が深いかというと、そのような印象は受けません。もちろん、そういった方面をしっかり研究している人は多いのでしょうが、映画やアニメ、漫画などで悪魔や悪霊に関する名前でどう考えても知識不足だろうと感じてしまうのが多いですね。ただこれは名前だけを借りた作品や物語の構成上仕方ない場合もあるので、悪いとは言えません。

 

 もちろん日本でも悪霊のようなものはあります。怪談では特にそういった類が登場しますね。怪談話は古くから日本各地、様々な形で伝えられてきた物語で、日本人を形作ったもののひとつて言っても過言ではないでしょう。まさに日本人の価値観や恐ろしいものへ考えなどについて学べるバイブルです。

 そしてこれについて理解を深め、日本人を知っていった人物こそ小泉八雲です。

小泉八雲という人物

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 出生名は「ラフカディオ・ハーン(Patrick Lafcadio Hearn)」で、八雲の名前は日本国籍を取って名乗るようになりました。

 「知られぬ日本の面影」や「日本雑記」、「怪談」などを執筆し、当時の「日本」を海外に知らせた人物です。また執筆活動だけでなく、大学で英語を教えていたり、日本の価値観への学びを深めたりなど、外国人でありながら日本人を探求した人だと言えるでしょう。

 

 彼を語る上で外せないのは「怪談話」です。彼の著書を読んでいると、彼はここから日本人の価値観やあり方について学んだと思われます。

 今回、小泉八雲を取り上げようと思ったのも、ハロウィンの悪霊要素と日本の悪霊要素を持つ怪談を絡めて考えたからです。こじつけ気味ですが。

 また、奥さんや友人からの話でさらに学びを深めていきました。特に奥さんのセツは博識だったようで、八雲に民話、伝説を聞かせていたようです。ここら辺は私がまだ勉強不足なので割愛させてもらいます。(許して)

 

 さて今回、私が語る上で採り上げた本は新潮文庫小泉八雲集」です。彼の代表作を48編も収録しており、一冊でいくつも読めるのが利点です。収録された彼の著作ごとに区分されているので、興味を持った話が収録されている本を探しやすいです。

 古本屋で見つけた改版なのですが、読みやすいのも利点です。たぶん文字が大きいからだな!(まだ若いのに)

 

 ここからは収録されている話で、私が特に感銘を受けたものをいくつか挙げます。話を読んでから見て欲しいので、できるだけ言葉を選んで書いていきたいと思います。

守られた約束

 義兄弟のなった侍の約束のお話。「日本雑記」に収録されています。元ネタは「雨月物語」の「菊花の約」です。

 赤穴宗右衛門は、丈部左門と重陽節句の日(9月9日)に再び播磨の国加古(現在の兵庫県南西部)に戻ると約束しました。しかしその約束を守るために・・・。

 この話の驚いたことは、「約束をどれほど重要視しているか」ということ。宗右衛門はこの約束を守るために命を懸けますが、命どころかその魂までも約束のために懸けたのです。百里を走ったその魂、そして真実を知った左門の行動・・・これもその魂が招いた行動と言えるでしょう。最後の経久侯の行動も納得です。

 昔の日本では、約束がどれほど重要視されているかは大河ドラマや日本の歴史を描いた漫画で知っていました。いや知っているつもりでした。しかしこの話を読んだ時ほどの衝撃は受けなかったのです。おそらく「命だけ」という考えがあったからなのでしょう。

 

 ともに記された「破られた約束」との対比が興味深い作品です。あちらは男女の価値観の違いの物語としても面白いですね。

 それと八雲の作品では約束に重点が置かれているので省かれていますが、雨月物語の方ではこの義兄弟の関係にも大きく踏み込んでいます。

乳母桜

 乳母による自己犠牲のお話。「怪談」に収録されています。元ネタは調べましたが、わかりませんでした。知っている方がいたら教えていただきたいです。ただ乳母桜の伝説って探していると、いくつかあったのでそれらが元ネタなのかもしれません。

 「人間がどれほど愛情を抱けるか」という一種の恐ろしさを知りました。しかし同時に心に美しい何かを感じた気もします。日本特有の美意識として、この死は大きな意味を成していると言えるでしょう。

 

 大事な人(お露)を救うために、乳母が熱心に祈り、その祈りが叶えられた結果のように見えますが、本当にそうなのでしょうか。タイミングが重なっただけで、お露が回復したことに因果関係は無かったのかもしれません。

 先日、ある作品を読んでいた時に「自己犠牲は無駄である」という主張がありました。犠牲による愛を受けた者、ましてや死んでしまい残された人の気持ちを考えるとその主張もわかります。

 

 しかし私はそう思いません。それほどの愛情が無駄だとどうして言えるでしょうか。

 また自己犠牲的な面がある作者で思いつくのは、宮沢賢治ですね。彼の作品を読むと、その犠牲は間違いなく意味のあるものと言えるでしょう。

 

 ちなみに「姥桜」と書くと、ヒガンザクラの一種であったり、老いても美しい女性を指す言葉となります。

 また「怪談」には「十六ざくら」という、桜関係で自己犠牲の話が収録されています。こちらも「小泉八雲集」に収録されています。しかし「怪談」に二つも桜の話があるのは、それほど八雲が思う内容があったということでしょうか。

日本人の微笑

 「知られぬ日本の面影」に収録されている話。八雲自身のストーリーと言えるでしょう。

 日本人の微笑ひとつで、ここまで考えることができるのかと驚きました。読む前は愛想笑いのことを考えましたが、それとはまた違います。本能的に身につけた道徳と礼儀正しさであり、日本人特有の作法であると私は捉えましたね。

 同時にこれがもはや失われつつあるものとも思います。そこに平静はなく、古い考えは嘲笑の対象にもなっている気がします。まあ、古いものをすべて美徳と思うのも問題で、これも日本特有な気がしますが。

 

 いずれにせよ、この「微笑」ひとつに、日本人の民族的な価値観や風習、あり方など様々な要素が込められているのと同時に、そこには現在の日本が失いつつあるもの、そしていずれそれを後悔するであろうことが想像できます。

 おそらく私は鏡に向かって練習するレベルで笑顔が苦手なので、八雲の言う微笑は出来ない可能性が・・・。

日本人のハロウィンとして

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 今回はハロウィンの悪霊繋がりで「怪談」を扱う小泉八雲の作品について触れましたが、調べていくうちに彼自身の考えや日本への考えについてもっと知りたくなりました。

 特に驚いたのは太平洋戦争でアメリカ軍准将であったマッカーサーの軍事書記官ボナー・フェラーズが、八雲の作品を読んで、日本人の心理の理解を深めたこと。第二次世界大戦の結果を考えれば、その効果がどれほど大きなものであったかはわかります。

 加えて、日本特有の怪談。これを調べると物語としても面白く、地域によってその伝わり方に変化があったりと、興味深いものでした。八雲がここに興味を持ったのも納得です。

 

 八雲の日本人への理解は、現在の日本にどれくらい通用するのかはわかりません。しかしニュースでハロウィンの様子などを見ていると、彼の日本人の認識とはずれていくような印象です。

 祭りは楽しいもの。とても素晴らしいと思います。また外国の祭りを日本独自に昇華するのも国それぞれの文化でしょう。しかし本来の意味を一つも理解せず、ただ騒いで迷惑をかけるような行事に落とし込んでしまうのはいかがなものでしょうか。

 ハロウィンを楽しむ際には、この祭りがどういったものであるかを少しでも知り、日本ではどのようにこの祭りを楽しめるかを考え直すのが必要だと思います。

 

 ちなみに私のハロウィンの楽しみ方なのですが、パン屋またはケーキ屋に行くというのがあります。ハロウィン特有のかぼちゃを使ったパンや菓子が拝めますね。パンプキンパイとか美味しいですよ。

 あとはジャック・オー・ランタンの画像を調べたり、街中でそのデザインを見つけることです。あのデザイン、ものすごく好きで私のささやかな楽しみでもあるのです。