ワンピース航海記録

こちらはワンピースを中心に物語の感想などを扱っているブログです。

第972話「煮えてなんぼのおでんに候」 最後までド派手な奴よ

 972話の感想です。

 今回は見開きのカラー表紙。日清食品カップヌードルCMのHUNGRYDAYSの一味(窪之内栄策先生)と本家のコラボです。見比べるとやっぱり顔がかなり違います。表紙も今回はルフィがカップヌードルを食べています。相変わらず美味そうに食べるなぁ。

第971話「釜茹での刑」 始まるのは伝説の一時間 - ワンピース航海記録

 

 ついに始まったおでんと赤鞘九人男の公開処刑。しかしまだ死ぬわけにはいかないおでんはたった一人で家臣を支えつつ煮えたぎった油の中に身を投じて一時間我慢するというのです。これを耐えればカイドウ達は解放すると言いますが…。一方でしのぶはおでんがオロチと交わしていた密約について話します。後に語り継がれる伝説の一時間の結末は…。

容赦はしません

 しのぶのいきなりの告白に民衆は混乱。いくら事実だとしてもこんなことを唐突に聞かされては戸惑うのも当然です。ここでしのぶを止めたのは御庭番のリーダー福ロクジュ。しのぶの未来への希望と光月家への忠誠に対しても、夢だと一笑を付します。

 そんな中、オロチに処刑を取りやめるように頭を下げる民衆もいますが、その一人の胸に矢が!どうやらオロチの指示で放たれたようです。

 この時、民衆たちはオロチの恐ろしさの本質を知ると同時に、さっきまで長いだけの処刑の意味を理解しました。今ではすっかりオロチの部下が釜を囲み、民衆たちの間は次から次へと真の情報が出回ります。ここでどの道一族を思い出したのは私だけでないはずだ!民衆の声援にも素直に応えるおでんはあっという間にワノ国全域を味方につけたと言っていいでしょう。

おでんの望みとは

「もしこの釜茹でをしのいだらおれはこの国を「開国」したいんだ…!!」

 そんな中、おでんは家臣たちに聞こえる声だけで自分の望みを話します。ここで彼が明かすのはワノ国の衝撃事実。この国特有の鎖国という制度は光月家だったのです。狙いは国外に存在した強大な力から国を守るためだったようです。さらにこの国どころか世界がひとりの人間を待っているというのです。その人物がいずれ現れた時にワノ国は力を貸せるような国でないとおでんは考えます。

「———はっきり言うぞ あいつらは今日…必ずおれを殺す」

 もはや彼にはわかっていたのでしょう。ここまで来た以上オロチやカイドウが止まるはずがないことを。なればこそ自分の命がないことがわかれば、それを託すのは自分が最も信じる仲間たち。

「おれの代わりに「ワノ国」を“開国”して欲しい!!」

 この命がけの訴えに傳ジローはおでんと共にと言いかけますが、おでんの意思を汲み取った雷ぞうが自分たちの夢はおでんと同じであることを伝えました。漢じゃないか、忍者よ!

受け継がれる意志

 さあ半分の30分経ったところで釜の温度はなお下がること無し!もはや地獄変を想起させるほどの猛烈な炎と熱気が立ち込めます。そしてついにきっかり一時間!おでんは釜茹でを耐えることが出来たのです。

 これに湧く赤鞘と民衆たち。誤解は解け民衆も味方につけた今、カイドウにも臆さない逆転のチャンスが出来たと考えられますが…。

 しかしここでオロチの部下たちが銃口をおでん達に向けます。おでんの約束を不意にしてワノ国への復讐を望むようなオロチがこんなことを良しとするはずはありません。一分前に銃殺刑に変えたと宣告しさらに一家皆殺しの罪状まで追加です。

 …がこれを見越していなかったおでんではありません。渾身の力を振り絞り家臣たちの乗っていた橋板を投げます。

「頼んだぞ!!お前ら…!!「ワノ国」を開国せよ!!!」

 放り出された赤鞘はリーダー錦えもん指揮の下で全力ダッシュ!全員で九里に向かいます。

 思い出すのはあの男との出会い。どうしようもない小悪党な自分を、腹を空かせていた自分を、残虐であった自分を、迫害されていた自分を、なんだかんだいって受け入れてくれた器のでかいおでんとの思い出が甦るのです。

 そしておでんにはカイドウが対面。その死にざまを賛美し、さらに自分との戦いに水を差したババアを始末したことを言い渡します。変にまじめなカイドウにおでんはたださらに強くなること、そして自分の侍たちへの信頼を言い渡します。

 所詮自分など笑い話にでもなれば良しのもの。そこには若き頃の傍若無人で傲慢な彼ではなく、信頼する部下と愛する家族、そして伝説の海賊と冒険して本当の意味で成長した男が立っていました。

「“一献の酒のお伽になればよし”

 “煮えてなんぼのォ~~~~”」

 しかしここでおでんの頭にカイドウの銃弾が撃ち込まれます。…いや終わりません。彼の最後の魂は受け継ぐものがいました。赤鞘の家臣はもちろんのこと、彼を信じるのはワノ国の民たち!

「「「“おでんに候”!!!!」」」

 

 おでんが処刑された後、トキのところにも知らせが入りました。彼女はおでんから預かっていた手紙を読みます。そこにはカイドウを倒せなかったときのこと。20年以上先に世界で大海を別つとされるほどの大きな戦いがあるというのです。つまり20年もすればその戦いの主役たちが新世界へと現れるとのこと。もしカイドウを討つ可能性があるならば彼らしかいません。とはいえそれまでの20年間、ワノ国の暗黒期をどうするか。つまりおでんが望むのはトキの能力で…。

 ここで彼女はおでんの手紙をびりびりに破ります。思い出すのは彼に預けられた二振りの刀。おでんの愛刀を預かった最後の夫婦の会話です。負けるわけにはいきません。彼女もロジャーや白ひげの船に乗っており、おでんと苦楽を共にした女なのですから。

「見てておでんさん20年後の未来!!!」

 強い女性の決意で今回は終わりです!

これは賛否分かれそう

 ついにおでんが処刑された今回の話。

 全体的に反応に困る話と言わざるを得ません。自分は面白い点とツッコミたい点が入り混じった感じです。

 まずおでんですが死にざまは見事というしかないでしょう。自分の死期を理解した彼は最後の最後までできることをやり遂げ、その意志を家臣たちへ託す…そういう意味ではロジャーや白ひげの死に近いものがある気がします。それにあの気迫!あれだけでもオロチが後の20年もの間、怯えていたのも納得の迫力でしょう。個人的には民衆に応援されて素直に対応するところも好きですね。あそこを邪険にしないのは彼の魅力です。

 民衆の手のひら返しについては、わりとすんなり受け入れました。手のひら返しというよりは真実を知ったことでの反応と言った方がしっくりきますかね。これでおでんを応援するのは当然と言いますか。

 同時にオロチのゴミクズ共発言も理解できるところです。オロチから見ればこの流される態度の変わり様も自分を迫害してきた民衆を思い出すのでしょう。あいつは前回でキャラとしての魅力を大いに引き上げたした。

 またおでんに対しての赤鞘九人男やトキ、しのぶの反応も良かったです。彼らがおでんの意思を受け継ぐのに納得いくセリフや回想が胸打たれます。ここまでやって赤鞘九人男かしのぶに裏切り者の疑いがあるのがなぁ…。もう別のモブキャラとかでもいいよ(暴論)

 

 ここまで書いて何が不満かと言われれば、まずカイドウの件でしょう。なんか急に武人キャラのような態度を示していますが、それでババアを殺すのはお門違いもいいところです。これ前回あそこまでカイドウが意気揚々としていなければまだよかったんですがねぇ。しかも銃殺ということで本当に銃を使って殺すのはカイドウさんとしてどうなのよ。これでは完全に命じたオロチの腰ぎんちゃくよ。

 いやまあ、ある意味こいつのキャラ自体は一貫しているんですよ。情緒不安定なメンヘラで海軍の評価通り他の者を強さだけで尊敬されるという点においては。しかしそんな奴がボスになると…なんか小物感が凄いのです。

 あとこれは個人的なのですがババアの0コマ退場はいかがなものかと思いました。おそらくワノ国の過去編で一番引っ掻き回した原因を0コマ死って…。別に酷いことをされて死んでほしいとかではなくてカタルシスもないなと思いました。まあババアはロックス関連者でもありそうだからカイドウが警戒するのはわかるし、オロチも迫害された過去を考えればババアにも非があるから気にしなくてもわかりますが。

 

 それとおでんの死に様であった「おでんに候」のくだり。歌舞伎らしさを魅せた演出だと思うのですが、やはり漫画だと無理がある気がします。歌舞伎見たことない人だと想像しづらいでしょうし、あそこは民衆が言うよりもおでんが最後まで言って現代での戦いが終わった後とかの方で言った方が締りが良い気がします。いや現代におでんいないのにやるのかと言われればそれまでですが。ただ民衆が言う前のあの息を吸う場面とか…無くても良くない?個人的にはあのセリフだけはおでんが最後まで言ってほしかったですね。ここら辺はアニメで見れば印象が変わりそう。

 さてついにおでんが死にましたが、地味に私が気になるのはここで過去編が終わるのかということ。やろうと思えばトキや康イエの描写で1話は使えると思うのですが、個人的にはそろそろ現代に戻って戦いにも触れてほしいですね。終わりの文章を見れば次回からは現代かな?

 

 ところで今回、あのモノローグのすぐ後に「恋するワンピース」が出張で本誌掲載されていたんですよね。なんか走り始めた現代があの世界のように見えて笑ってしまいました。あっちの方は相変わらずキレッキレのギャグを見せつけてくれます。メンバーに疑問を覚えましたが、CMの内容を考えると妥当でしょう。個人的に一番目を引いたのは山本君に抱えられるチョッパーですね。あれちょっと絵がキモすぎます(笑)

 おでんの見事な死にざまとカイドウの性格にやきもき…すらも吹っ飛ばす恋ピに開いた口が塞がらずにまた次回!

第973話「光月の一族」 赤鞘最後の男 - ワンピース航海記録