ワンピース航海記録

こちらはワンピースを中心に物語の感想などを扱っているブログです。

第973話「光月の一族」 赤鞘最後の男

 973話の感想です。

 表紙連載は「ゴッティの反撃」です。しかし隠れてばかりでは救助もできません。ゴッティどうする?

第972話「煮えてなんぼのおでんに候」 最後までド派手な奴よ - ワンピース航海記録

 

 おでんとオロチの真相を知った国民ですが時すでに遅し。おでんは釜茹でを耐えるも意地でも彼を処刑しようとするオロチによりそのド派手な人生に幕を閉じます。彼を信じる家臣や妻は自分のできることをするために…

逃げる逃げる赤鞘

 冒頭はおでんがモモの助を高い高いしている回想から。場所はなんと落下中のロジャーの船。ルフィ達も使ったタコバルーンがあるので空島から青海へ戻るところでしょう。船員も思わずツッコむ高い高いです。とはいえおでんも子供たちにはこの世界の広さを知ってほしいのでしょう。

 ワノ国に戻ってからは家臣にはゾウとミンク族が光月家にとって大切な同士であることを話していました。もしものことがあれば彼らを頼るようにも話しています。この頃にもおでんは家族との団らんは忘れません。しかしこの温かな日常は昔の話…。

 

 現在、赤鞘九人男は九里を目指して全力で目指しています。追手に攻撃を仕掛けられたりもありますがしのぶが刀を渡してくれたことにより事なきを得ます。もはや彼女もすっかり光月家の家臣のひとりです。

 さてこんな緊急時にもかかわらず、最後尾ではイヌアラシとネコマムシが口論中。どうもおでんが死んだ責任や裏切り者の件で互いに罵り合っているようです。おかげで後ろから追ってきた巨大な影(おそらくナンバーズ)に捕まる始末。想像以上にひでえ捕まり方!!さらにあまりにも多い追手に傳ジローとアシュラがしんがりとして引き留めることに。こっちは勇敢だなぁ。

未来へ!

 しかしすでに九里にはカイドウ達が先回り。火災のキング筆頭に城には火がつけられ、モモの助はカイドウに捕まっていました。カイドウはモモの助の喉を掴み、屋根の上に。手を離せば真っ逆さま、ちょっと力を入れれば首絞めで呼吸できず、完全に命を取られる直前です。

 そんな状況でカイドウはモモの助におでんのことをバカ殿であると話します。どうもわざと煽っているように見えますが…。だがモモの助が思い出すのは母の言葉。おでんがいかに偉大な侍かを思い出し、必死にカイドウの言葉を否定しつつ自分の覚悟を話します。

 しかし悲しいかな、その言葉はあまりにも弱く責任感だけによって出た言葉でした。

「うわあああん父上ェ~~~!!!」

 そしてすべてを悟ったモモの助は大号泣。呆れ失望したカイドウは城に残しそのまま去っていきました。こいつおでんにあてられてから武人感出てきたな。

 

 さあこのまま焼け死ぬかと思いきや、ここで錦えもん達が突入!ここで以前、ルフィ達に話していた未来へ飛ぶことになったのでしょう。さらに河松は日和を連れて城の水堀から脱出します。城の出入り口を見張っていた相手には見つかりません。

 そして気を引くように顔を隠した人が馬に乗って城から逃げます。その正体は光月トキ。すでにモモの助達を20年後に飛ばしたようです。博羅町では多くの民がワノ国の未来に絶望するなか、彼女はおでんに言われたことを思い出します。彼はあくまでトキが望んだであろう20年後の世界がひっくり返る日に飛ぶことを提案しますが、彼女はそれを拒否。時代を渡って逃げてきた先で出会った心から愛する男を置いて、自分が行けるものですか。自分の死に場所はこの時代、未来は愛する息子と信頼に値する家臣たちに任せ彼女は希望を残すことにしたのです。

「“月は夜明けを知らぬ君”“叶わばその一念は”“二十年を編む月夜に九つの影を落とし”・・・“まばゆき夜明けを知る君と成る”」

 博羅町の入り口に立つと、彼女は後世に語り継がれるこの言葉を町民達の前で言い放ちます。その後ろからは銃弾が…。

 

 一方その頃のオロチ城。彼は湯に浸かっているにも関わらずガチガチと体を震わせているのです。その湯はすでにとてつもないほどの高温。それでも寒いのは赤鞘の遺体が見つかっていないことに不安を感じているからなのです。

「あいつが死んだ証拠を持って来い!!!」

怒りと涙に支配された顔

 さてモモの助や錦えもん達は未来へ、トキは希望を託すような言葉を残し死にました。残った他の侍たちはどうなったか。アシュラは後に盗賊団のアジトとする山まで逃げ、河松は日和を連れて逃げ切り彼女と共にいました。

 そんな中で最も苦しむ様子を見せるのはアシュラと共に足止めをしていた傳ジロー。涙を流しながらとてつもない形相でやりきれない怒りの唸り声をあげていました。そして鈴後に雪が降り積もる頃、ようやく隠れていた小屋から出てきた彼の人相は以前とは全く違っておりました。ニヒルな笑みを浮かべていた口元はすっかりへの字型になり、目と眉は恐ろしいほど吊り上がっています。この人相はどっかで見たことが…。

 ボロボロの身なりで花の都へ行ったのでチンピラに絡まれますが、仮にも赤鞘九人男。そこら辺の小悪党には負けず、軽くあしらいます。おかげでそのチンピラが子分になりたがります。その時にすっかり変わった傳ジローが名乗った名前は…

「そうだな…「狂死郎」…!!」

 

 元より九里の財政管理をしていた叩き上げインテリとその実力で見る見るうちに侠客の一味として名を挙げた狂死郎はオロチ直属の部下となります。屈辱と怒りで体は震えますが、その感情をぐっと押し込んで花の都でヒョウ五郎一家に変わる侠客一家となります。

 また常に眠そうな様子をしているため「居眠り狂死郎」と言われますが、これにも理由があり夜中にほっかむりを被って倉から金をくすねていたのです。その正体を隠していた顔は「丑三つ小僧」だったのです。

 そんなある日、別の地で河松が日和とはぐれて涙を流していた頃、狂死郎の店の花魁が連れてきたのはなんと日和でした。彼女たちは孤児だと思ったようですが、彼はすぐその正体に気づきます。すぐに彼女に正体を教え、彼は日和と共に正体を隠すことを決めます。怒りに支配された顔は錦えもん達も気づかないであろう変わりよう。それを逆手に敵をだますにはまず味方からを現実に、日和もひとりの花魁として正体を隠します。決戦まで他言無用、狂死郎一家と花魁「小紫」の誕生で今回は終了です。

 

ようやく判明した正体

 狂死郎の正体が判明した今回の話。

 ネットでも多くの読者が予想されていた通り、行方知れずの赤鞘九人男最後のひとり傳ジローでした。骨格や髪の生え際なんかは同じなのですが人相はだいぶ変わりましたね。

 その後は名前を変えて、ヒョウ五郎一家に変わる侠客として動きます。もともと姑息な手や金勘定は得意の物、実力も申し分なくオロチも信頼する存在となります。彼の20年を思うととても辛いものだったでしょう。人相変わるほど怒りを抱いた仇の下で20年働き、さらに日和を守るためとはいえその仇が気にいるほどの花魁にしてしまったのですから。ひょうひょうとしていた彼があんな顔と声で苦しんでいるのを見ると本当に怒りで顔が変わったんだなって…。

 彼が傳ジローと知るとこれまでの発言なども意味が理解できますね。将軍の犬発言とかはその最たるものです。やはり彼が忠誠を誓うのはおでんなんだなって。思えばあのリーゼントもどきの髪型も顔を見せないようにするためなのかもしれません。

 しかも正体不明だった丑三つ小僧まで兼任しているときたものです。居眠りの異名にはこれも関係していたのか。たしかに立場上、見張りの位置とかも知ることが出来るので言われてみれば納得のポジションですわ。

 

 前半では怒涛のスピードで錦えもん達が未来へ行くまでの過程が描かれます。その際のモモの助とカイドウのやり取りは辛いものがありました。あんな幼子が背負える責任や使命感じゃないわ…。彼が自分の言葉で何をするのかという意思の決定をするまでがかなり重要ですよね。今のところそれに近いことはゾウの国でルフィに促されてやっていましたね。

 個人的に彼の成長はこのワノ国編でかなり重要なものなので納得できる落としどころを期待したいです。それこそオロチと似たような復讐者の状況なので彼とは別の道で成長してほしいものです。

 

 オロチと言えば描写こそ短いですがすごく丁寧に感じました。復讐者だからこそ自分がやられる不安もあるのでしょう。あいつこの後の20年もの間、こんな恐怖に悩まされるんだろうな。しかし気が狂うわけでもなく慎重を期すのは大したものです。彼の描写が短く上手くまとまっているのにカイドウはさあ…。いや彼も彼で今回少し落ち着いた感じはするんですけど、メンヘラ情緒不安定におでんとの勝負で得た武人感が…余計にごちゃついただけだこれ!

 

 しかし未来に飛ばずワノ国に残った侍たちはみんな大したものですよ。河松は日和を守り続けてはぐれた後は刀集め、捕まっても屈服せずに耐え忍ぶ。アシュラはやさぐれたもののそれまでは荒くれもの共をまとめ上げていたし、山賊になってからもメンバーはおでんを信じていたやつらでいざという時には協力してくれる。傳ジローはあの注意深いオロチに気づかれずに部下となって裏で暗躍、日和もしっかり保護していました。 少なくとも忠臣として描かれた3人を考えると、やっぱり裏切り者で可能性があるのは未来に行った組ですかね。最近はカン十郎辺りが有力な印象を受けますが、過去編を読んでいるとこの中に裏切り者がいて欲しくない気持ちなんですよ。正直、盗聴でしたとかいうオチであってほしいとすら思います。

 それと個人的に今回のツボだったのはトキとおでんの回想のやり取り。おでんさんよ、あんた女好きでモテていたのにそこはわからないのかよ!いやサンジも本気で惚れられていたプリンの気持ちわかっていたか怪しいし、意外とそういうものなのかもしれません。何はともかくすごくほっこり、ちょっぴり甘酸っぱい気持ちになりました。

 トキさんの矜持とモモの助、狂死郎の今後に期待しつつまた次回!

第974話「いざ、鬼ヶ島!!」 絶望と希望のコンボ - ワンピース航海記録