953話の感想です。
表紙連載は「敵船強奪!!いざスリラーバーク」です。この手並みの鮮やかさはさすがはベッジといったところでしょう。しかしスリラーバークに今はローラはいるのでしょうか?扉絵ではウォーターセブンにいることは確認されていますが…。
第952話「日和と河松」 牛鬼丸は何者? - ワンピース航海記録
ゾロが牛鬼丸から刀を奪い返そうとする最中、日和と河松が懐かしの再会!二人とも喜びますが、そこに牛鬼丸への報復で現れた百獣海賊団が襲い掛かります。雑兵共などゾロと河松には痛くもかゆくもありませんが、不意打ちをくらった牛鬼丸は早々に撤退。しかし逃げる中、河松の生存に涙しており…。
鈴後の風習を守って
冒頭から河松の回想がスタート。それは突如いなくなった日和を探す河松でした。顔を隠しながら必死に探しますが、一向に見つかりません。日和もこれ以上河松が衰弱していくのを見たくなかったからというお互いを思った結果がこれなのがねぇ…。
場面は変わって、牛鬼丸を追うゾロ。手負いにもかかわらずその巨体を音たてながら逃げていきます。見失うも相手は負傷者。血痕をたどればあっさり見つかるでしょう。しかしそこでゾロが見たものは…。
今度はおいはぎ橋の二人へ場面転換。いまだに現れる残党狩りに驚きますが、それに狙われる巨大僧兵にも河松は疑問を抱きます。成長した日和と河松の話はそもそも河松がなぜここへ来たかというもの。河松はそれについて話し始めます。
そもそも雪の降り積もるこの鈴後という地域は、隣の地域の白舞の康イエと同じく霜月の一族が納めていた場所でした。大名の名は「霜月牛マル」といい、狐を相棒にしていた剣士だそうです。しかし彼もカイドウには勝てず、鈴後は廃墟になってしまいました。
そんな鈴後では「常世の墓」と呼ばれる風習があり、その寒さから桶に入れた死体は百年単位で腐らず墓標は刀を使うことが決められています。となれば、そこにある刀は多種多様。なまくらもあれば名刀もあるような墓地となっているのです。当然、墓荒らしも多いこの地で河松が行ったこととは…。
場面は河松の回想へ。河松が鈴後へ向かうと、百獣海賊団が何者かによって追い立てられていました。追い立てていたのはなんとたった一匹の狛狐。その狐こそ牛マルの相棒である「オニ丸」だったのです。
矢を受けて血みどろながら決意ある獰猛な表情のオニ丸。面識ある河松は彼に近づきますが、限界が来たのか知り合いが来て安心したのかオニ丸は倒れます。河松は心配しますが、それと同時に驚いたのは彼がいたその場所。
「まさかおぬしこれを一人で…守り続けてきたのか!!」
なんと墓地にある見渡す限りの墓をたった一匹で守り抜いていたのです。その年数は鈴後が滅びた時期を考えると5年以上!
主への忠誠心
とりあえず盗んだであろう食料をオニ丸に与え、治療を行う河松。オニ丸も知り合いで恩人の彼を無下に扱うようなことはしません。
しかしここで事件発生!なんと河松が刀を掘り起こしているではありませんか!オニ丸は怒りのまま吠えますが、河松は許せとだけ言って手を止める様子はありません。
亡き主人の後を継いで長年守り続けていた墓を荒らされているとなればオニ丸の怒りも当然のこと。河松の腕に噛みつきます。何とか振り払う河松ですが、オニ丸も攻撃を止める様子はありません。
しかし主人のことを考えているのは河松も同じこと。彼とて死者の墓を暴きたいような冷血漢ではありません。それでも亡き主の一人が未来に必ず光月おでんの望んだ開国を行う者たちが現れるという言い残しを信じ、いずれカイドウやオロチを倒す戦いが来ることを信じているのです。その時に必要となるのはやはり大量の武器。なればこそここにある刀は彼にとって備えとして必要なのです。ただの盗人どもに奪われる前に隠さなければならないのです。
戦ともなれば死者を弔うよりも前に、その武器を取り屍を超えてまでも前に進み戦わなければならないもの。魂の宿る刀ともなればその想いがあると考えるだけで戦いのへの気持ちが違うというものです。
「「百獣海賊団」と「ワノ国」の戦はまだ終わってはおらぬ!!刀を眠らせるにはまだ早い!!!」
赤鞘九人男の一人として、まだワノ国の未来へ希望を残す男の訴えは強力なもの。そして彼自身、日和を守り切れなかった今は主人に報いるためにこのようなことしかできないという自責の念に苦しんでいたのです。
腕を食われても墓荒らしをやめないという根性を見せた河松の涙と訴えにオニ丸は口を離すと、彼が墓を荒らすのを黙ってみていました。
墓を守る墓荒らし
翌日、河松が目を覚ますとなんとオニ丸まで刀を掘り起こしていました。亡き主人の仇を取りたいと思うのはこの狐も同じこと。彼は河松と協力して刀の貯蔵庫として地下を掘り、来る日も来る日も墓を荒らして刀をそこに蓄えていました。
さらに彼らは本当に墓の刀を狙ってきた悪党からも武器を取り上げ貯えてきました。顔を隠し墓を守るその者たちの名は鈴後の本郷に繋がるおいはぎ橋に陣取っていました。その時に使っていた名前こそ「牛鬼丸」。オニ丸と今は亡き牛マルを合わせたような名前です。
それからしばらくして都へ食料を盗もうとしていた河松が捕まってしまったことでこの一件は終息しました。発言通り、本当に河松が不覚すぎるわ。
これは13年も前の話なのでさすがにオニ丸がまだいるとは思えません。しかし当時集めていた刀があれば数百人程度ならばまかなえると考えて、彼はここに戻ってきたのです。
ここでゾロに追いつく日和と河松。ゾロはつぶれかけている家屋の前で考えていました。なんでもこの家屋に牛鬼丸が入ったのでそのまま追うか迷っていたようです。ただのボロ廃墟に見えますが、河松には見覚えがあります。そこはかつてオニ丸と共に掘った地下の入り口だったのです。
刀じゃ~!
地下に入った河松は錦えもんへと連絡を取ります。兵の数が増えても武器が足りないという問題を抱えていましたが、なんと地下には数百どころか数千の兵がいても十分すぎるほどの刀や槍が!これにて問題は解決ですが疑問も残ります。この仕業、オニ丸の仕業かと思われますが人によって行われたようにしか見えません。いったい誰がしたのでしょうか。
その誰か―――牛鬼丸は負傷した部分を抑え木の陰に隠れていました。河松が見つけたことを確認すると姿を変えてこじんまりした狐の姿に。自分の役目を果たしたオニ丸は満足そうにどこかへ去っていきました。
さて外では日和がゾロに秋水を返すように言いました。とはいえ、今の持ち主はゾロなのでこれを渡すのには納得いきません。
しかし日和は代わりに自分の父から譲り受けた刀を渡すと言います。その刀の名を「閻魔」。名刀のようですが、何より特筆すべき点は…
「カイドウに唯一傷をつけた伝説の刀です!!」
あの化け物にダメージを与えた刀の存在を示したところで今回は終了。
忠誠の塊
まるで昔話のような雰囲気を見せた今回の話。
メインとなるのは牛鬼丸の正体でもあった鈴後のかつての大名の相棒オニ丸と河松の話でした。河松の必死の訴えは自責の念でつぶされそうになりながらも光月トキの言葉を信じて来る決戦のために戦い続ける彼の想いがこれでもかというほど伝わってきます。
そしてその想いに答えたオニ丸は彼に協力。河松と別れた後、人の姿になってまでも牛鬼丸として彼の代わりに武器を集めていたというその忠誠心には頭が下がります。最後は河松にも会わずにそっと去っていくあたりが昔話をほうふつさせる雰囲気を醸し出していました。何か元ネタあるのかしら?
それにしてもオニ丸は牛マルの約束を守って5年以上、さらに河松との武器集めを一匹になってから続けて13年。ワノ国がカイドウに支配された20年間、ずっと忠誠を持って戦い続けていたのには驚きました。
牛鬼丸は目的不明のわからないキャラだけどおそらく彼のおかげで武器の件もあっさり解決するんだろうなとは思っていましたが、これほどのドラマには胸が打たれる思いでしたね。人の姿になってまでも戦い続けるその姿には読み返すと感慨深いものがあふれてきます。その忠誠心はまさに死んでも立って主を守ろうとした弁慶ですよ。
こうなると早々に読みたいのはおでんの過去話。河松の忠誠心を知れば知るほど明確な描写が欲しくなってくるのです。光月家がどれほど慕われたのかはこれまでの描写から察せられはするのですが、もうちょっと決め手となるようなものが欲しいのです。それこそ彼らがどれくらい平和に過ごしてきたのを読めば、今回の河松と日和の一件ももっと胸を締め付けるような内容だったのかと思えます。どうも私は光月関係への感情移入が中途半端な感じだなぁ。
ラストは日和がゾロに秋水の代わりとしておでんの刀である閻魔を渡すと言ってきました。その切れ味はあのカイドウに唯一傷をつけたものというほどの名刀です。カイドウはそれを強引に奪って喉元に刺せばいいんじゃねえかな。(適当)
ただ私、このままゾロが閻魔をもらうのには納得いきません。ブルックの影が入っていたとはいえ、リューマ自身から受け継いだその刀をやすやすと渡せるものではないと思うのです。あの時のリューマはブルックの意識こそありますがどうもリューマの頃の昂る感情などはあったように思えますし。
また剣士の強さは刀だけで決まるわけではありません。剣術の腕とその刀との相性がぴったりの時こそ本当の実力が現れるのだと思っています。だからこそこのまま刀を受け取ってしまうと、そのカイドウに傷をつけたという評判だけが独り歩きするように思えてしまうのです。実際はゾロの腕が凄いのはわかっているのですが、私自身がそう思っちゃいそうなんですよねぇ…(呆れた奴)
というかですね、おでんの形見ともいえる刀ならばそれを最終的に持つべき者は他ならぬモモの助でしょう。ワノ国で刀がそれほど意味のあるものならば、なおさら遺志を受け継ぐべきはモモの助であり彼に渡すのが妥当だと思うのです。
なんかサンジがレイドスーツ着た時にも腑に落ちないような発言していたな、私。どうもこの強化の仕方が安易に感じてしまうんだよなぁ…。とにかくやるならそれ相応のエピソードが欲しいです。
ただオニ丸の事情や鈴後の一件を知れば知るほど、彼が秋水にこだわるのもよくわかるんですよね。そもそも彼が仕えていた霜月牛マルですが、リューマの本名が霜月リューマなので元主人の先祖の刀を取り戻したいという気持ちもわかります。
うーん…もうこれは秋水も閻魔もワノ国においてゾロは新しい刀を探せばいいんじゃないかな!(よくない)
ところで今回、回想で河松たちが追い払った墓荒らしって小紫に財産奪われて都を追放された人たちですね。当時より若いですがばっちり面影が残っています。名前がびん豪とかそんな名前だったかしら?あの人たち、昔からいろいろやっていたのね。百獣海賊団を擁護するわけではありませんが、海賊でもないのにあいつら本当に小悪党だったんだな。
それと個人的に河松においおいと思ってしまう場面が多かったです。盗みで捕まるのはまだしもお前刀を売ろうととか思っちゃったのかい!まあ空腹がきつければ仕方なしか。それとこのセリフ。
「よし!!今日も墓を荒らすぞ」
何も間違っていないのに、文字だけで見たら酷すぎるなこれ!
なんか河松までネタキャラに見えてきたところで、また次回!