ワンピース航海記録

こちらはワンピースを中心に物語の感想などを扱っているブログです。

第942話「”白舞大名“霜月康イエ」 笑えない理由の笑顔

 942話の感想です。

 扉絵リクエストは「『世界のチーズ図鑑』からチーズを厳選しているモンドールと『世界のワイン図鑑』からワインを厳選している一流ソムリエのネズミ達」です。ブクブクの能力ってこのようなものにも応用できるんですね。この能力はもはや錬金術の領域にすら片足ツッコんでいると思う。

 

第941話「えびす町の人気者」 ひょうきん者の正体 - ワンピース航海記録

 ついに捕まったと花の都のお騒がせ者である丑三つ小僧。なんとその正体はトの康でした。しかしそれ以上に衝撃的なのは、彼はかつてワノ国で大名であった康イエであったということ。公開処刑として彼の姿がワノ国全域にさらされる形となりますが・・・

大名康イエ

 冒頭はいきなり回想からスタート。ひとりの力強い顔をした男が集まっている侍たちに話をしています。まったく面影がありませんが若き日の康イエです。これは再び顔を会わせてもわからねえよ。

 彼が大名を務める白舞はワノ国で正規の港がある場所。そのためもっとも外来の人物が出入りする場所ですが、それゆえにワノ国の侵略を許さないように強き軍隊の侍でなければならないと説いています。

 そんな彼の演説を他人事のように感心するシルエットはなんと光月おでん。なぜか康イエの家に入り浸っています。康イエとしては将軍スキヤキの息子として頑張ってほしいと思っているようですが、おでんは自分よりも康イエの方が適任だと考えています。世間の意見も同じようで「『スキヤキ』亡き後は『おでん』にあらず。『康イエ将軍』である」と評されるほどです。人望あるな、康イエさん。

 

 康イエはどうもおでんの軽薄な態度が気に食わないようで、スキヤキのおでんへの勘当も愛のムチと考えています。

 怒りのゲンコツを喰らいながらもおでんの気持ちは将軍へは向かず、それよりも海に出たいとまで言います。二人のやりとりはなんだかんだでお互いを認め合っているような間柄ですね。

康イエの告白

 そして現在、康イエは多くの人達に声援を受けながら昔とは違って笑顔を崩さずに磔にされています。

 死刑の罪状ですが、過去にオロチに対して軍を率いて反乱を起こした罪とのこと。窃盗でないのは「丑三つ小僧」と名乗ったのは目立つためのウソだと主張します。これが前回、町民に詫びたいことのひとつですかね。

 

 するとここでドレークに報告が。なんとえびす町の町民たちがなだれ込むように花の都へ向かってくるとのこと。見せしめのための公開処刑ですが康イエの人望から暴徒が現れる可能性も十二分にある状況となりました。

 さてここでいよいよオロチの件に触れ始めた康イエ。従者の苦労を察するなどと冗談を飛ばしながら町民たちへ訴え始めたことは・・・

「さて!!皆の衆!!————見よ!!麗しき「花の都」!!絶景かなワノ国!!」

 立派な山に立ち並ぶ家々が見える高いところにいる康イエからすればその目に映るのはワノ国の見事な景色。これを築き上げたのは「光月家」と多くの庶民たちが力を合わせてきたからです。あくまでこの手柄は彼らのもの。けっして今の権力にあぐらをかいているオロチのものではありません。

 オロチに聞かせるように彼の加虐な行いを口にするトの康。顔こそ笑っていますがその言葉は美しきワノ国を汚したオロチへの怒りがあってもおかしくはないでしょう。

「欲深きドロで汚していくだけの!!!ただの害虫だ!!!」

 

 さらにここでトの康が衝撃の告白。なんとあの反逆の為の逆さ三日月の絵は自分が作ったと偽ります。オロチの計略とカイドウの化け物のような力によってなすすべもなく敗北したものの寿命で死んでいくわけにもいかないというもっともらしい理由までつけました。

 そんな中、件の人物であるオロチが銃を構えて登場。怒りながらも死に際の言葉があるかを康イエに訊ねます。そんな康イエの言葉はオロチにとっての心の呪縛というもの。

「“器の小さき男には”“一生食えぬ「おでん」に候”!!」

 これこそが彼の狙い。未来の将軍となるであろうモモの助、おでんの想いを果たすための赤鞘九人男たちへの作戦をこのまま不意にさせないために自身を犠牲にしようとしたのです。すでに捕まっている同志へも別の集合場所を示すなど行動に余念がありません。

なぜ笑えるかというと・・・

「子供らの目を塞げ!!「光月」に仕えた最後の大名が いやさえびす町のお調子者があの世へ参るぞ!!!歌ってゆこうか!!!あらよっと♬」

 顔はえびす町にすむひょうきんな者として、しかしその想いはカイドウとオロチを討ち倒すために集まった者達への希望を胸にオロチ達の銃弾を受けます。最後に聞こえた娘の呼びかけに謝罪の想いを馳せながら・・・

 

 銃弾の雨を受けて磔状態から落下した康イエ。もはや息はありません。しかしえびす町の人物はなんと涙を流すほどの大笑い。追いついたブルックは戸惑い、ゾロの方は怒りを露わにします。

 ついには倒れた康イエを見ながら、娘のおトコまで大笑い。許せないゾロは掴みかかろうとしますが、日和に止められます。なんと彼女の話では彼らは笑顔しか表情を出せないとのこと。たとえどんなに苦しくても悲しくても、笑顔以外の表情が出せないという恐ろしさの原因はいったいなんなのか。

「カイドウと・・・オロチが持ち込んだ「SMILE」という果実のせいで!!!」

 えびす町の皆の恐ろしい現状を引き起こした読者もよく知る例の悪魔の実だったのです。

 

あいつはやはりクズだった

 康イエの最後と、衝撃の事実が明かされた今回の話。

 あの違和感があるほど笑いに包まれたえびす町の笑顔はなんとSMILEによるものだったことが判明します。たしかに名前はSMILEですが、これはちょっと酷すぎない!?

 今までは人口悪魔の実ということで百獣海賊団の戦力増強くらいのものだったのですが、ここにきて本当にヤバい劇薬のようなイメージを持たされます。いや人工悪魔の実というのは凄いのだけれど、ギフターズや真打ち勢の微妙さを見るとね・・・。

 しかしSMILEといえば原材料はSADという薬品。シーザーしか作れないということは毒や麻薬のようなものだと思われるので恐ろしい副作用も納得です。

 なぜえびす町の人たちが口にしたのだろうかとも思いましたが、SMILEを作るための実験体として反逆した康イエ達に使用したと考えれば自然でしょう。シーザーは平気で子どもをさらって実験体にしていたような男ですし、カイドウは戦力増強のため、オロチは反逆者への罰とするでしょう。

 

 またラストの狂気と悲しみがある場面で薄らぎかけそうですが、今回の注目点としては康イエの決死の作戦でしょう。彼は自分の命を使い、反逆の作戦を仕切り直しにする、オロチの人望の無さを露呈し彼の言葉の信用性を薄める、反乱に参加する者やまだ踏み切っていない者達への士気上げと多くのことを成し遂げました。

 死に際こそ悲しいものですが、少なくとも今後に希望を残して散っていけたでしょう。地味に作中過去話以外で死亡するのも珍しく読者目線でも印象に残るキャラだったと思います。

 

 そして同時に気になる発言も残していきました。まずはオロチに対しておでんに大恩あると話していました。これがどういうことなのか気になりますし、そうなればオロチは恩を仇で返したことになります。どうも言い方が同格のように思えたので、オロチもおでんや康イエと同じく大名だったのでしょうか?たしかワノ国は6つの地方に分かれていましたし、康イエの残る我々の4名の大名とも言っていたのでその可能性が浮上してきました。

 さらに撃たれる前にオロチに向かって言った言葉。これはおそらくおでんの死に際の言葉でしょう。この言葉が後年オロチを悩ませる発言になったのでしょうが、おでんのこの言い方は豪快な感覚とどこか処刑されかけたルフィ並みの度量の深さを感じます。今回でおでんのシルエットも出たし少しはわかってきましたね、おでんという人柄が。

 にしても、康イエの昔の顔はまったく面影がありませんね。これはカン十郎たちが気づかなくてもしょうがありませんわ。何よりも理由が理由だし・・・。それでもあれほどの人望を持つのは、次期将軍と噂されていただけはありますわ。

 

 そして同時にここで謎を深めた人物は「丑三つ小僧」です。なんと康イエが人を集めるためについた嘘だということが判明しました。ここまで引っ張られるとこの人物について気になります。もはやただの義賊としては重要性がある人物でしょう。

 ありえそうなのはやはり未だに不明な赤鞘九人男の傳ジロー。それとすでに登場した人物でいえば飛徹や狂四郎、牛鬼丸あたりでしょうか。牛鬼丸は目的と性格がよくわからんし、狂四郎は敵であってほしいので、既存キャラだと飛徹辺りが無難かな。新キャラで康イエ同様に元大名とかでも面白そうですけどね。

 

 それにしても私としてはラストの笑顔の理由づけが久しぶりに心に来るものとなりました。これはリンリンの過去でマザーたちを食べたような描写があった時以来の気味の悪さだ。

 加えて、シーザーへの評価が改めて下がりました。カイドウやオロチも酷いのですけど、あいつの場合は喜々としてやっているイメージがつきやすいからでしょうか。むしろこのまますがすがしいほどのクズ野郎でいてくれ!

 来週の休載前になかなかえぐい爆弾を残した回だったと思いつつ、また次回!

第943話「SMILE」 外道も極まったなぁ・・・ - ワンピース航海記録