ワンピース航海記録

こちらはワンピースを中心に物語の感想などを扱っているブログです。

第974話「いざ、鬼ヶ島!!」 絶望と希望のコンボ

 974話の感想です。

 表紙連載は「おかみさん救出成功!!」です。正直なところ全く期待していなかったからゴッティが助けられたことに驚きですわ。

第973話「光月の一族」 赤鞘最後の男 - ワンピース航海記録

 

 トキの決死の最後によって20年後に飛ばされたモモの助達。残った日和と他の赤鞘は各々潜伏します。その中でも怒りと涙にさいなまされた傳ジローはすっかり顔が変わり、新たに狂死郎として花の都の侠客としてオロチの配下に潜り込みます。そして河松とはぐれた日和を守るため彼女を小紫へと仕立て上げ…

オロチが信頼する男

 冒頭、小紫として動く日和は巻き上げたお金を狂死郎へと渡します。どうやら彼が丑三つ小僧であると知っていた彼女は彼にこのお金をばらまいて来てほしいと渡したのです。このやり取り見る限りかなり頻繁にやっていますね。

 なかなか危ない橋を渡るような行為に狂死郎は彼女に毎日着物に血のりを仕込むことを釘刺します。オロチがすっかり惚れていることにどうしても限界が来たと感じた時に演技で彼女を死んだように見せかけるためのようです。

「———もう少しだから大丈夫…もう少しで…20年!!」

 二人して健気にトキさんを信じているんだなぁ。

 

 さて一方でオロチはカイドウと飲んでいましたが、知らせの手紙を読んでわなわなと震えていました。どうやらそこにはトキトキの能力について書かれておりモモの助や錦えもん達が過去から飛んで現代へ来たことが記されていたのです。

 カイドウはたかをくくったような態度を見せますが、オロチは手紙の内容を完全に信じて部下たちに指示を出します。

 彼がここまで警戒するのはその手紙の差出人がオロチにとって全幅の信頼を置ける男だからなのです。なんでもこの差出人の男は大衆演劇の一座に生まれたのですがオロチ同様に黒炭家の名を持っていたため、舞台中に両親を殺されたという悲惨な過去を持ちます。それ以来、彼は舞台での生き方しか知らない、つまり役を演じることでしか生きる意味を見出せなかったのです。そんなときに彼の前に現れたのは黒炭家本家であるオロチとババア&琵琶法師のコンビ。当時ですっかりヤマタノオロチの能力を扱いきれた彼はその男の両親の仇討をして、さらに復讐のために彼を光月家の家臣として潜り込ませます。その男が演じる光月家の家臣はまさに本物、死の瞬間まで光月の人間となるように命じたのです。無茶苦茶な命令に感じますが、すでに心は壊れブレーキの利かない彼は死に場所を与えてくれたことに喜びオロチに忠誠を誓います。

 彼がいたからこそおでんの金庫から倍の金を借りることが出来たし、カイドウの討ち入りへもわかったのだというのです。こいつはただ知りうる限りの正確な情報をオロチに送り続け、あの釜茹での際には本当に命令通り光月の家臣として死のうとしていました。まさにオロチにとっては最高のスパイで信頼できる男!

「気味が悪い程忠実に!!」

 やはりそれは赤鞘九人男の誰かなのか…。

荒れた海の中で

 さて場面は変わって現在。これまでのワノ国の転覆から錦えもん達がおでんの想いを成し遂げるためにルフィ達と出会ったことが語られます。

 しかし現在は知っての通り、その準備も打ち砕かれた状況。荒れた海の中を錦えもん達だけで小舟で進んでおりました。せめてこの小人数だけでも闇討ちを狙うつもりです。海岸にはモモの助としのぶを残して彼らは命を懸ける覚悟で鬼ヶ島を目指します。

「おかしいですよ…こんなの!!作戦が漏れてるって事でしょう!?また!!」

 ここで涙をこぼすお菊が胸の内を吐露します。20年前のカイドウの討ち入りも康イエが変更する前の作戦も今回もオロチに先手を打たれて作戦を潰されていることを考えると、彼の言う通り間違いなく作戦は漏れていることでしょう。これにカン十郎は同意、他の者も口には出しませんが疑っているでしょう。

 もちろん錦えもんもそれは理解しています。ただ今さら苦楽を共にした仲間に内通者がいるとは思いたくないのです。そんな弱気な彼に菊は食ってかかります。本来リーダー格である彼が率先してあぶりだすべきなのです。

「内通者を見つけ!!斬り捨てて前へ進むあなたじゃなければ!!拙者達も前に進めません!!!」

 ここまでされながら錦えもんはいまだに煮え切らない様子。これにはお菊と共に声を上げていたカン十郎も涙しながら訴えます。

「菊の言う通りだ!!錦!!はっきりさせようぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれがそうだって事を!!!」

ようやく来てくれた

 それまでの涙はスッパリと引っ込み凶悪な表情をカン十郎は見せます。そう彼こそオロチの話していた密偵。評判通り、光月の家臣カン十郎という役になり切り彼らと苦楽を共にしてきました。仲間意識も忠義も本物、しかし死に場所を与えたオロチにはただ情報だけをずっと流し続けるという純粋すぎるほどの壊れっぷりだったのです。

 そんな彼の本名は黒炭カン十郎。黒炭家の分家の男でした。ここで彼による種明かし。最初の作戦、康イエの決死の作戦の変更、もっと言えばゾウにジャックが行きついたことまで全て彼の仕業だったのです。

「こうなるまで!!なぜ身内を疑わなかった!!?」

 

 そこに現れたのは百獣海賊団の船団!錦えもん達の乗る小舟の何十倍はあろうかというサイズです。

 怒れる錦えもんはカン十郎を頭部からスッパリと切り落としますが、それでもまだ話し続けます。なんと本物のカン十郎は港に残っておりオロチの命に従ってモモの助を鬼ヶ島へ連れて行こうとしていました。共に乗っていたのは彼の能力で生み出された偽物の絵。お前、こんなに美術能力あったのかよォ!!

 荒れ狂う海にはるかに巨大な敵の船、大戦力の裏切り、さらにモモの助まで捕まった絶体絶命の中なにやらわいのわいの騒ぐ声が聞こえます。するといきなり百獣海賊団の船の左舷に砲撃が!そして聞き慣れた一人の声が錦えもんに呼びかけます。

 何事かと驚く中、錦えもん達の船を救助するように潜水艦が登場!ここでもやっぱり聞き慣れた声が。

 最後は百獣海賊団の船の右舷に攻撃!こっちの荒々しい男は別の港に侍と船が大量にいたことを明かします。

「海は海賊が相手だ!!!」

 ここでついに到着したのは最悪の世代ルフィ、ロー、キッド。シャボンディ以来のそろい踏みにワクワクしながら今回は終わりです。

私だ。お前だったのか。

 とうとう内通者が判明&ルフィ達が復帰した今回の話。

 内通者については割とネットで予想されていた通りの人物でしたね。たしかにカン十郎は早い段階で出た割には身元もはっきりしていないし、あらゆる点でスパイとして納得できる立ち位置ではありました。おでんの迫害にあっていたという記録や歌舞伎役者のようなデザインも一種の伏線と言えるでしょう。海外の人だったかが考察していた利き手でない方で絵を描いてわざと下手にしているというのは特に感心しました。

 正直…ショックですわなぁ。前も書きましたがやっぱりおでんと赤鞘九人男の絆や楽しそうな描写を見た後だと裏切り者はいて欲しくなかったのが本音ですね。

 カン十郎のゾッとするところはおでんの家臣として本物だったことですよね。錦えもん達のことを間違いなく仲間と思っていたし、なんなら20年前のカイドウの討ち入りの際も本気で戦っていたでしょう。ただあくまでそれは彼にとっての役であって、もう一人の忠誠を誓うオロチには情報は送っていただけという見せかけの仮面を本物の顔にするような男でしたわ。不気味さだけで言ったらワンピース随一にキャラじゃないかな。

 この狂気があるからこそオロチも完全に信頼しているのが面白いですね。まあオロチ同様に黒炭の名を持ったゆえの悲しみもあるから数少ないシンパシーを抱く人物なのかもしれません。

 またこいつの能力もここに来て厄介になりました。だって彼の本当の画力は本物と見分けがつかないほどなんですもの。これ下手に時間を与えればゾウを上る時のような変な龍じゃなくてカイドウ張りの強い奴も仕上げられそうですよ。思えば彼が能力者であることも一種の伏線ですね。

 

 この曇る展開にラストのルフィ達の登場はこれでもかというほど心が躍りました。彼らが来てくれただけで安心感が段違いです。

 しかも最悪の世代の中でも別格の3人がそろい踏みというのは頼もしすぎます。ドレークや場合によってはホーキンス辺りも駆けつけてくれそうです。もう2年前の2億越え組みに期待するしかない!

 そういえばキッドが別の港に侍と船が集まっているという発言をしていましたね。これはおそらく狂死郎…もとい傳ジローが動いてくれているのでしょう。思えば彼の味方にもばらさないというのは正解でしたね。ある意味、カン十郎同様にスパイみたいな存在でしたし。

 

 今回はやはり一番衝撃を受けたのはカン十郎の告白シーンでしょう。オロチのどれだけいかれているかの説明からあのページをめくった後の彼の表情には思わず声を出してしまいました。直前まで涙流していたのにそれもスパッと止めているんですよ。仲間意識とかも本当であったことも説明してくれるんですよ。こいつ本当に役者として誰かを演じ続けるしかないほど壊れていたんだなって…。

 だいたい黒炭家だからって舞台中に親を殺されるっていくら何でも野蛮すぎませんかね。オロチ、カン十郎はワノ国が生んだ狂気ですよ。こいつら負けてもかなり目的果たしているから最後まで胸糞悪い状況になりそうなんですよね。本当にモモの助にはこの負の連鎖を断ち切ってほしいものですわ。

 ショックもあるがルフィ達のおかげで気持ちも持ち直しつつまた次回!

第975話「錦えもんの一計」 さすが錦さん! - ワンピース航海記録